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犯罪事実確認とは——日本版DBSで確認される内容と手続きの流れを整理します【第3回】

2026.8.24

こんにちは。
神戸市灘区のくじら行政書士事務所です。

8月も下旬に入り、夏の疲れが出やすい時期になりました。
まだまだ暑い日が続きますので、皆さまどうぞ体調に気をつけてお過ごしください。

さて、前回の記事では、日本版DBSの対象となる事業者について、義務対象と認定対象の違いを整理しました。
今回は第3回として、日本版DBSの中心的な仕組みである「犯罪事実確認」について解説します。

日本版DBSという言葉を聞いたとき、多くの方がまずイメージするのが「性犯罪歴の確認」だと思います。
ただし、犯罪事実確認は、事業者が自由に従事者の前科を調べる制度ではありません。
誰について、いつ、どのような手続きで確認するのかが決められており、確認結果は非常に慎重に取り扱う必要があります。

この記事では、2026年8月18日時点で公表されているこども家庭庁の資料をもとに、犯罪事実確認の基本的な内容を整理します。

犯罪事実確認とは

犯罪事実確認とは、対象業務に従事する人について、こども家庭庁から交付される「犯罪事実確認書」により、特定性犯罪事実該当者であるかどうかを確認する手続きです。
もう少し簡単にいうと、こどもと接する一定の業務に従事する人について、法律で定められた性犯罪歴の有無を、こども家庭庁の仕組みを通じて確認する手続きです。
日本版DBSというと、この犯罪事実確認の部分が特に注目されます。

しかし、これまでの記事でも触れているとおり、日本版DBSは犯罪事実確認だけの制度ではありません。
こどもへの性暴力を防ぐためには、日頃からのルールづくり、相談体制の整備、職員研修、情報管理なども含めて、事業所全体で取り組む必要があります。

犯罪事実確認は、その中でも特に採用や人事管理に関わる重要な手続きといえます。

犯罪事実確認の対象となる人

犯罪事実確認の対象となる人は、主に次のように整理できます。

区分内容
新規従事者施行日以降、または認定日以降に、新たに対象業務に従事する人
施行時現職者義務対象事業者において、施行日時点ですでに対象業務に従事している人、または施行日前日までに従事が決まっている人
認定時現職者認定事業者において、認定日時点ですでに対象業務に従事している人、または認定日前日までに従事が決まっている人
5年ごとの再確認対象者前回の犯罪事実確認から5年を経過する人

ここで注意したいのは、犯罪事実確認は、採用選考の早い段階で「念のために確認する」ような使い方はできないという点です。
特定性犯罪事実該当者にあたるかどうかは、非常に機微性の高い個人情報です。
そのため、犯罪事実確認は、従事者が対象業務に従事することが確定した段階で行う必要があります。

たとえば、新規採用の場合には、内定を出した後や、対象業務に従事することが決まった後に、犯罪事実確認を行うことになります。
また、異動や配置転換によって新たに対象業務に従事する場合も、対象業務に従事することが決まった段階で確認を行うことになります。

確認されるのは「特定性犯罪」

犯罪事実確認で確認されるのは、すべての犯罪歴ではありません。
確認の対象となるのは、法律で定められた「特定性犯罪」です。
特定性犯罪には、こどもへの性暴力等に関係する一定の犯罪が含まれます。

代表的なものとしては、次のような犯罪が挙げられます。

  • 不同意わいせつ
  • 不同意性交等
  • 監護者わいせつ、監護者性交等
  • 16歳未満の者に対する面会要求等
  • 児童に淫行をさせる行為
  • 児童買春
  • 児童ポルノ関係の罪
  • 性的姿態等撮影関係の罪
  • 条例上の一定の迷惑行為や青少年健全育成条例違反

実際には、対象となる犯罪は細かく定められています。

ブログ記事では細かい条文名までは省略しますが、重要なのは、「すべての前科が確認されるわけではなく、法律で定められた性犯罪等が確認対象になる」という点です。

何年前までの犯罪歴が確認されるのか

犯罪事実確認では、過去の特定性犯罪について、一定の期間内のものが確認対象となります。

確認対象となる期間は、刑の種類によって異なります。

区分確認対象となる期間
拘禁刑の実刑等刑の執行を終わった日、または刑の執行を受けることがなくなった日から20年
拘禁刑の執行猶予裁判が確定した日から10年
罰金刑刑の執行を終わった日、または刑の執行を受けることがなくなった日から10年

つまり、特定性犯罪について拘禁刑の実刑等を受けた場合は20年、拘禁刑の執行猶予や罰金刑の場合は10年が基本的な確認対象期間となります。

ここで注意したいのは、「一生、犯罪歴が確認される」という制度ではないということです。

あくまで、法律で定められた一定期間内の特定性犯罪が確認対象となります。

犯罪事実確認はいつまでに行う必要があるのか

犯罪事実確認は、対象者の区分によって、いつまでに行う必要があるかが異なります。

また、ここでいう「期限」とは、単に交付申請をする期限ではありません。
犯罪事実確認書を受領し、確認を行う期限です。

そのため、申請から確認書の交付までにかかる期間を見込んで、余裕を持って手続きを進める必要があります。

義務対象事業者の場合

学校、認可保育所、指定障害児通所支援事業など、義務対象事業者については、次のように整理できます。

対象者確認期限
新規従事者対象業務に従事させるまで
施行時現職者令和11年12月24日まで
5年ごとの再確認対象者前回確認日の翌日から5年を経過する日の属する年度の末日まで

施行時現職者については、制度施行時点ですでに勤務している人を一斉に確認することになるため、事務が集中しないように分散して申請を行うことが予定されています。

認定事業者の場合

学習塾、スポーツクラブ、認可外保育事業、指定障害福祉サービス事業など、国の認定を受けることで制度の対象となる事業者については、次のように整理できます。

対象者確認期限
新規従事者対象業務に従事させるまで
認定時現職者認定等の日から1年を経過する日まで
5年ごとの再確認対象者前回確認日の翌日から5年を経過する日の属する年度の末日まで

認定事業者の場合は、認定を受けた時点で既に対象業務に従事している人について、認定等の日から1年以内に確認を行う必要があります。

犯罪事実確認の手続きの流れ

犯罪事実確認は、原則としてオンラインで行うことが予定されています。

手続きの全体像は、次のように整理できます。

  1.  対象業務に従事することが決まる
  2.  事業者が、対象者に犯罪事実確認の必要性や手続きの流れを説明する
  3.  事業者・従事者が、それぞれ必要なアカウント登録を行う
  4.  事業者が、従事者情報、従事する事業所、業務内容、従事予定日などを登録する
  5.  従事者本人が、戸籍関係書類など必要な情報を提出する
  6.  こども家庭庁が確認を行う
  7.  犯罪事実確認書が交付される
  8.  事業者が確認結果を踏まえて、必要な対応を行う

こども家庭庁のガイドラインでは、事業者はGビズIDを取得した上で、こども性暴力防止法関連システムのアカウントを作成することが必要とされています。
また、従事者側も、マイナンバーカード等による本人認証を行い、アカウントを作成することが必要とされています。

実際の手続きでは、従事者の氏名、住所、生年月日、従事する施設・事業所、業務内容、従事予定日などを登録することになります。
また、日本国籍の方については戸籍関係書類、外国籍の方については在留カードや旅券等の書類が必要になる場合があります。
必要書類には機微な情報が含まれる可能性があるため、従事者本人が提出することが原則とされています。

確認書の交付までには一定の期間がかかる

犯罪事実確認は、申請すればすぐに結果が出るものではありません。

こども家庭庁のガイドラインでは、所要日数の目安として、日本国籍の場合と日本国籍を有しない場合で異なる処理期間が示されています。

区分所要日数の目安
日本国籍の場合2週間から1か月程度
日本国籍を有しない場合1か月から2か月程度

ただし、特定性犯罪前科がある旨の確認結果となる場合や、訂正請求・中止要請が行われる場合などには、さらに時間がかかることがあります。
そのため、採用や配置転換のスケジュールを考える際には、犯罪事実確認に必要な期間をあらかじめ見込んでおくことが重要です。

特に、施行直後や年度替わりの採用時期には、申請が集中する可能性もあります。

「採用日直前に確認すればよい」という考えではなく、早めに確認フローを整えておく必要があります。

特定性犯罪前科がある場合の流れ

犯罪事実確認の結果、特定性犯罪前科があると確認される場合があります。
この場合でも、直ちに事業者へ確認書が交付されるわけではありません。
まず、こども家庭庁から本人に対して、特定性犯罪前科がある旨の事前通知が行われます。
その後、本人には、訂正請求や手続きの中止要請を行う機会が設けられています。

たとえば、確認内容に誤りがあると考える場合には、本人が訂正請求を行うことができます。
また、内定辞退をする場合など、事業者が犯罪事実確認を行う必要がなくなった場合には、本人が手続きの中止要請を行うこともできます。
本人が一定期間内に訂正請求や中止要請を行わない場合、または中止要請をしない旨の意思表示をした場合には、事業者に犯罪事実確認書が交付されることになります。
このような仕組みは、誤った情報による不利益や、必要以上の情報提供を防ぐために重要なものです。

一方で、事業者としては、確認結果を受け取った後、こどもへの性暴力を防止するために必要な対応を検討する必要があります。
この点は、採用や人事管理、配置転換、業務制限などにも関わるため、次回以降の記事で詳しく整理します。

「いとま特例」とは

犯罪事実確認は、原則として、対象業務に従事させるまでに行う必要があります。

しかし、急な欠員など、やむを得ない事情により、従事開始前までに犯罪事実確認を行う時間がない場合も考えられます。
このような場合に、例外的に、対象業務に従事させた日から3か月以内に犯罪事実確認を行うことができる制度があります。

これが「いとま特例」です。

一定の場合には、6か月以内まで認められることがあります。
ただし、いとま特例はあくまで例外的な取扱いです。
確認が間に合わないからといって、何もしなくてよいわけではありません。
いとま特例が適用される場合には、犯罪事実確認を行うまでの間、その従事者を特定性犯罪事実該当者とみなして、必要な措置を講じる必要があります。

たとえば、こどもと1対1にしない、単独での送迎を避ける、他の職員の目が届く体制にするなど、こどもの安全を確保するための対応が必要になります。

通常の採用や配置では、犯罪事実確認に必要な期間を見込んだスケジュールを組んでおくことが重要です。

事業者が今から準備しておきたいこと

犯罪事実確認は、制度が始まってから慌てて対応するのではなく、施行前から準備しておくことが大切です。

事業者が今から確認しておきたいこととしては、次のようなものがあります。

  • 自社・自施設で「対象業務」に従事する人を洗い出す
  • 新規採用時の犯罪事実確認の流れを整理する
  • 配置転換や異動時の確認フローを整理する
  • 施行時現職者の確認スケジュールを作る
  • 申請から確認書交付までの期間を採用スケジュールに組み込む
  • 従事者に必要書類を案内する方法を決める
  • 確認結果を扱う担当者を限定する
  • 犯罪事実確認書や確認記録の管理方法を決める
  • 確認結果に応じた配置・業務制限・採用対応を検討しておく

特に、障害児支援事業所や保育所など、職員数が多い事業所では、施行時現職者の確認が大きな事務負担になる可能性があります。

また、パート、アルバイト、外部講師、派遣職員、委託先などが関わる場合には、どの範囲の人が対象になるのかを整理しておく必要があります。

犯罪事実確認は、単に「確認書を取る」だけの手続きではありません。
採用、人事配置、情報管理、職員への説明、保護者への説明など、事業所運営のさまざまな部分に関わってきます。

まとめ

今回の内容を整理すると、次のとおりです。

・犯罪事実確認とは、対象業務従事者について、特定性犯罪事実該当者であるかどうかを確認する手続き

・対象となるのは、新規従事者、施行時現職者、認定時現職者、5年ごとの再確認対象者

・確認されるのは、すべての犯罪歴ではなく、法律で定められた「特定性犯罪」

・確認対象期間は、拘禁刑の実刑等の場合は20年、拘禁刑の執行猶予や罰金刑の場合は10年が基本

・新規従事者は、原則として対象業務に従事させるまでに確認が必要

・犯罪事実確認書の交付までには一定の期間がかかるため、採用や配置のスケジュールに余裕を持つ必要がある

・急な欠員などの場合には「いとま特例」があるが、あくまで例外的な取扱いであり、その間も安全確保のための措置が必要

・犯罪歴に関する情報は非常に機微な情報であり、必要な範囲で慎重に取り扱う必要がある

犯罪事実確認は、日本版DBSの中心的な仕組みですが、実務上は採用・配置・情報管理と密接に関わります。
そのため、制度の趣旨を理解した上で、事業所ごとの運営実態に合わせて準備を進めることが大切です。

おわりに

今回は、日本版DBSの中心的な仕組みである「犯罪事実確認」について整理しました。

犯罪事実確認は、こどもと関わる事業者にとって重要な手続きですが、採用や配置、人事管理、個人情報管理にも関わるため、慎重な対応が必要です。
特に、障害児支援事業所や保育所、学習塾、スポーツクラブなど、こどもと継続的に関わる事業者は、対象者の範囲や確認時期を早めに整理しておくことをおすすめします。

くじら行政書士事務所では、障害福祉サービス事業所・障害児支援事業所を中心に、事業運営に関する手続きや制度対応のご相談を承っています。

日本版DBS・こども性暴力防止法への対応について不安がある場合は、お気軽にご相談ください。

行政書士 内藤紗也