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日本版DBSの対象事業者とは——義務対象と認定対象の違いを整理します【第2回】

2026.7.15

こんにちは。
神戸市灘区のくじら行政書士事務所です。

7月も折り返して、神戸では梅雨が終わり、急に夏が本格化しましたね。
今年も厳しい暑さとなるそうです。体調を崩しやすい時期でもありますので、皆さまどうぞ無理なくお過ごしください。

さて、前回の記事では、日本版DBS・こども性暴力防止法の概要について解説しました。
日本版DBSとは、こどもと関わる仕事に就く人について、一定の性犯罪歴の有無を確認する仕組みを含む制度です。

ただし、日本版DBSは単なる「性犯罪歴の確認制度」ではありません。

こどもと関わる事業者が、こどもへの性暴力を防ぐために、日頃からのルールづくり、相談体制の整備、研修、情報管理などを行うことも重要な内容になっています。

今回は第2回として、日本版DBSの対象となる事業者について解説します。

特に重要なのは、対象事業者には大きく分けて、次の2つがあるという点です。

区分概要
法律上、対応が義務付けられる事業者制度の施行後、法律に基づく性暴力防止の取組が求められます。
国の認定を受けることで制度の対象となる事業者事業者が申請し、国の認定を受けた場合に、制度に基づく取組を行います。

自社や自施設がどちらにあたるのかによって、準備すべき内容やスケジュールが変わってくるため、まずはこの違いを押さえておくことが大切です。


日本版DBSの対象事業者は大きく2つに分かれる

こども性暴力防止法では、対象となる事業者が大きく2つに分けられています。

1つ目は、法律上、こどもへの性暴力防止の取組を行う義務がある事業者です。これらは、学校、認可保育所、認定こども園、児童福祉施設、指定障害児通所支援事業など、こどもと継続的に関わる公的性格の強い事業が中心です。

2つ目は、国の認定を受けることで制度の対象となる事業者です。たとえば、学習塾、スポーツクラブ、放課後児童クラブ、認可外保育事業、指定障害福祉サービス事業などが想定されています。

この2つは、どちらもこどもへの性暴力を防ぐための取組を行う点では共通しています。しかし、「必ず対応しなければならない事業者」なのか、「国の認定を受けた場合に制度の対象となる事業者」なのかという点で大きな違いがあります。

義務対象となる事業者とは

まず、法律上、対応が義務付けられる事業者について見ていきます。

こども性暴力防止法では、学校や児童福祉施設など、こどもと日常的・継続的に関わる一定の事業者について、法律に基づく性暴力防止の取組が義務付けられます。

具体的には、次のような事業者が対象として示されています。

主な義務対象の例補足
学校/専修学校の高等課程教育機関として、こどもと継続的に関わる事業です。
認定こども園/認可保育所日常的にこどもを預かる施設として制度との関係が深い分野です。
児童相談所/児童福祉施設/児童養護施設児童福祉分野の施設・機関です。
障害児入所施設/指定障害児通所支援事業児童発達支援、放課後等デイサービスなどが関係します。
乳児等通園支援事業乳幼児を対象とする通園支援事業です。

たとえば、保育所、認定こども園、児童養護施設、障害児入所施設、児童発達支援、放課後等デイサービスなど、こどもを直接支援する事業所は、この制度と関わりが深いと考えられます。
これらの事業者は、制度の施行後、犯罪事実確認を含む性暴力防止の取組を行う必要があります。

「うちは小規模だから関係ない」「職員数が少ないから対象外」という判断ではなく、まずは運営している事業の種類が制度の対象に含まれるかどうかを確認することが大切です。

認定対象となる事業者とは

次に、国の認定を受けることで制度の対象となる事業者について見ていきます。

認定対象となる事業者は、法律上、最初から一律に義務が課されるわけではありません。
事業者がこども家庭庁に申請し、一定の基準を満たしていると認められた場合に、認定を受けることができます。
認定を受けた事業者は、こどもと接する従事者について、過去に性犯罪を犯していないかの確認などを行う必要があります。

認定対象として示されている事業には、たとえば次のようなものがあります。

主な認定対象の例補足
専修学校の一般課程/各種学校こどもが通う教育関連の事業です。
学習塾/スポーツクラブ民間教育・習い事・スポーツ指導などが関係します。
放課後児童クラブ放課後にこどもを預かる事業です。
一時預かり事業/病児保育事業/認可外保育事業保育関連の民間事業です。
指定障害福祉サービス事業居宅介護、同行援護、短期入所などが関係します。

これらの事業者は、こどもと関わる機会が多い一方で、学校や認可保育所のように、最初から一律に義務対象とされる事業者とは少し位置づけが異なります。
そのため、制度上は「国の認定を受けるかどうか」を事業者が検討する形になります。

ただし、こどもや保護者の立場から見ると、認定を受けている事業者かどうかは、今後、事業者選びの一つの判断材料になる可能性があります。

義務対象と認定対象の違い

義務対象と認定対象の違いを整理すると、次のようになります。

項目義務対象認定対象
位置づけ法律上、対応が求められる事業者国の認定を受けた場合に制度の対象となる事業者
主な例学校、認可保育所、認定こども園、児童福祉施設、指定障害児通所支援事業など学習塾、スポーツクラブ、放課後児童クラブ、認可外保育事業、指定障害福祉サービス事業など
対応の考え方制度の施行後、必要な対応を進める必要があります。事業内容や運営形態を踏まえて、認定を受けるかどうかを検討します。

義務対象となる事業者は、法律上、性暴力防止の取組を行うことが求められます。

一方、認定対象となる事業者は、国の認定を受けた場合に、法律に基づく制度の対象となります。

つまり、義務対象は「法律上、対応が求められる事業者」、認定対象は「申請して認定を受けることで制度の対象となる事業者」と理解するとわかりやすいです。

民間教育事業も対象になる可能性がある

認定対象の中で、特に幅広い事業者が関係しそうなのが「民間教育事業」です。

民間教育事業というと、学習塾や習い事教室をイメージしやすいかもしれません。

しかし、こども家庭庁の資料では、こどもに何かを教える事業であれば、事業内容は問わないとされています。

そのため、学習塾、スポーツクラブ、音楽教室、ダンス教室、プログラミング教室などに限らず、こどもに対して何らかの指導や教育的な活動を行う事業であれば、対象となる可能性があります。

また、資料では、芸能事務所やこども食堂なども、一定の要件を満たせば対象になるとされています。

民間教育事業として対象になるためには、主に次のような要件が示されています。

民間教育事業の主な要件

  • 6か月以上の期間中に、同じこどもが2回以上参加できること
  • こどもと対面で接すること
  • こどもの自宅以外の場所で教えることがあること
  • こどもに何かを教える者が3人以上であること

このように、対象になるかどうかは、事業名だけで決まるわけではありません。

「うちは学習塾ではないから関係ない」と考えるのではなく、こどもを受け入れているか、こどもに何かを教えているか、継続的に関わる仕組みがあるかといった点から確認する必要があります。

障害福祉・障害児支援事業者は特に確認が必要

障害福祉・障害児支援に関わる事業者は、日本版DBSとの関係を特に確認しておきたい分野です。

まず押さえておきたいのは、障害児通所支援は「義務対象」障害福祉サービスは「認定対象」として整理されているという点です。

区分制度上の位置づけ主なサービス例確認しておきたいこと
障害児通所支援義務対象児童発達支援、放課後等デイサービス、居宅訪問型児童発達支援、保育所等訪問支援など制度の施行後、犯罪事実確認を含む性暴力防止の取組が必要になります。
障害福祉サービス認定対象居宅介護、同行援護、行動援護、短期入所、重度障害者等包括支援など義務対象ではありませんが、国の認定を受けることで制度の対象となります。

障害児通所支援には、児童発達支援、放課後等デイサービス、居宅訪問型児童発達支援、保育所等訪問支援などが含まれます。

これらの事業は、法律上の義務対象として示されているため、制度の施行後は、犯罪事実確認を含む性暴力防止の取組を行う必要があります。

一方で、居宅介護、同行援護、行動援護、短期入所、重度障害者等包括支援などの障害福祉サービスは、義務対象ではなく、国の認定を受けることで制度の対象となる「認定対象」として整理されています。

つまり、障害福祉分野では、児童発達支援や放課後等デイサービスなどの障害児通所支援は「義務対象」、居宅介護や短期入所などの障害福祉サービスは「認定対象」と整理すると分かりやすいです。

障害福祉サービスの中には、児童が利用するサービスもあります。たとえば、居宅介護や短期入所などは、障害のあるこどもが利用する場合があります。

そのため、障害児通所支援を運営している事業者は、義務対象としての対応を確認する必要があります。

また、障害福祉サービスを運営していて、児童の利用がある事業者については、認定を受けるかどうか、認定を受ける場合にどのような体制整備が必要になるかを確認しておくことが重要です。

同じ法人で、児童発達支援や放課後等デイサービスと、居宅介護や短期入所などを併せて運営している場合もあります。

その場合は、事業所ごと、サービス種別ごとに、義務対象なのか、認定対象なのかを分けて整理しておくとよいでしょう。

義務対象事業と認定対象事業を両方行っている場合

事業者によっては、義務対象となる事業と、認定対象となる事業の両方を行っている場合があります。

たとえば、認可保育所を運営しながら、一時預かり事業や病児保育事業を行っている場合があります。

また、児童館と放課後児童クラブを一体的に運営している場合なども考えられます。

このような場合に、認定対象事業についても必ず別途認定を受けなければならないのかは、事業の運営実態によって判断が必要です。

こども家庭庁のQ&Aでは、義務対象事業を運営している事業者が、その事業に付随する認定対象事業を一体的に行っている場合には、認定対象事業の従事者についても、義務対象事業の従事者として犯罪事実確認を行うことができる場合があるとされています。

ただし、そのためには、事業運営や人事管理が一体的に行われている必要があります。

同じ法人が複数の事業を行っている場合でも、事業所や人員管理が分かれている場合には、慎重に整理する必要があります。

認定を受けるとどうなるのか

認定対象事業者が国の認定を受けると、法律に基づく性暴力防止の取組を行うことになります。

具体的には、こどもと接する従事者について犯罪事実確認を行うこと、性暴力防止のための体制を整えること、情報管理のルールを整備することなどが求められます。

また、認定を受けた事業者は、こども家庭庁のウェブサイト上で公表される予定です。

さらに、認定事業者であることを示すマークを広告などに使用できるようになります。

保護者や利用者にとっては、こどもへの性暴力防止の取組を行っている事業者かどうかを確認しやすくなるため、認定の有無が安心材料の一つになる可能性があります。

一方で、認定を受けるということは、制度に基づく義務や情報管理の責任も生じるということです。

そのため、認定を受けるかどうかは、単に「マークを使えるようになる」という観点だけでなく、自社の体制整備や従事者管理を含めて検討する必要があります。

事業者がまず確認しておきたいこと

日本版DBSへの対応を考える際には、まず自社や自施設がどの事業に該当するのかを確認することが大切です。

確認ポイント見ておきたい内容
運営している事業が義務対象に含まれるか学校、保育、障害児支援などに該当するか確認します。
認定対象となる事業を行っているか学習塾、スポーツクラブ、認可外保育、障害福祉サービスなどを確認します。
複数の事業を一体的に運営しているか事業運営や人事管理が一体的かどうかを確認します。
こどもと接する従事者がいるか正社員、パート、外部講師、委託先なども含めて整理します。
対象となる事業所やサービス種別はどれか事業所単位・サービス種別単位で確認します。
認定を受ける場合に必要な体制を整えられるか犯罪事実確認、研修、相談体制、情報管理などを確認します。

特に、障害児支援、障害福祉、保育、学習支援、スポーツ指導など、こどもと継続的に関わる事業者は、早めに制度との関係を確認しておくことをおすすめします。

制度の施行後に慌てて対応するのではなく、今のうちから、自社の事業区分、従事者の範囲、採用時の確認フロー、研修体制、情報管理の方法などを整理しておくことが重要です。

まとめ

今回の内容を整理すると、次のとおりです。

日本版DBSの対象事業者は、大きく「義務対象」と「認定対象」に分かれる。

学校、認可保育所、認定こども園、児童福祉施設、指定障害児通所支援事業などは、法律上の義務対象として整理されている。

学習塾、スポーツクラブ、放課後児童クラブ、認可外保育事業、指定障害福祉サービス事業などは、国の認定を受けることで制度の対象となる。

対象になるかどうかは、事業名だけでなく、事業内容、運営形態、こどもとの関わり方、従事者の範囲などを踏まえて確認する必要がある。

障害福祉・障害児支援に関わる事業者は、サービス種別ごとに制度上の位置づけを確認しておくことが大切。

日本版DBSへの対応を考える際には、まず「自社・自施設がどの区分にあたるのか」を整理することが出発点になります。

おわりに

今回は、日本版DBSの対象となる事業者について解説しました。

こども性暴力防止法は、学校や保育所だけでなく、障害児支援、学習支援、スポーツ指導、認可外保育など、幅広い事業者に関係する可能性があります。

特に、複数の事業を運営している法人や、障害福祉・障害児支援に関わる事業者は、どの事業が義務対象にあたるのか、どの事業が認定対象にあたるのかを早めに確認しておくことが重要です。

くじら行政書士事務所では、障害福祉サービス事業所・障害児支援事業所を中心に、事業運営に関する手続きや制度対応のご相談を承っています。

日本版DBS・こども性暴力防止法への対応について不安がある場合は、お気軽にご相談ください。

行政書士 内藤紗也