ブログ
Blog
こども性暴力防止法とは——日本版DBSの全体像を整理します【第1回】

こんにちは。
神戸市灘区のくじら行政書士事務所です。
先日の台風6号、皆さまのところは大丈夫でしたでしょうか。
今回は日本版DBSについてお届けします。
近年、ニュースなどで「日本版DBS」という言葉を耳にする機会が増えてきました。
日本版DBSとは、こどもと関わる仕事に就く人について、一定の性犯罪歴の有無を確認する仕組みを含む制度です。
正式には「学校設置者等及び民間教育保育等事業者による児童対象性暴力等の防止等のための措置に関する法律」という法律に基づく制度で、一般的には「こども性暴力防止法」とも呼ばれています。
ただし、この制度は単に「性犯罪歴を確認する制度」だけではありません。
学校、保育所、学習塾、スポーツクラブ、障害児支援の事業所など、こどもと関わる事業者が、こどもへの性暴力を防ぐための体制を整えることを目的とした制度です。
こどもに関わる事業者にとって、今後の採用、人事管理、研修、相談体制、情報管理などに大きく関わる重要な制度になります。
日本版DBSについては内容が幅広く、事業者が確認すべき点も多いため、当ブログでは複数回に分けて解説していきます。 今回は第1回として、日本版DBS・こども性暴力防止法の全体像をわかりやすく整理します
日本版DBSとは?
日本版DBSとは、こどもと接する業務に従事する人について、一定の性犯罪歴がないかを確認する仕組みを含む制度です。
「DBS」とは、イギリスの犯罪歴確認制度である「Disclosure and Barring Service」に由来する言葉です。日本でも、こどもに関わる仕事に就く人について、性犯罪歴の確認を行う制度が導入されることから、ニュースなどでは「日本版DBS」と呼ばれています。
日本では、こども性暴力防止法に基づき、学校や保育所などの一定の事業者に対して、こどもへの性暴力を防ぐための取組が求められることになります。
この法律は、2024年6月に成立し、2026年12月25日に施行される予定です。
こども性暴力防止法の目的

こども性暴力防止法の目的は、教育・保育など、こどもが大人と継続的に関わる場面において、こどもへの性暴力を防ぎ、こどもの心と身体を守ることにあります。
こどもは、大人との関係の中で弱い立場に置かれやすく、被害にあっても自分から声を上げにくい場合があります。
また、学校、保育所、放課後等デイサービス、学習塾、スポーツクラブなどでは、こどもと職員が継続的に関わることが多く、場合によっては閉鎖的な空間で接することもあります。
そのため、事業者側には、性暴力が起こらないようにするための日頃からの取組、万が一被害が疑われる場合の対応、そして再発防止のための仕組みづくりが求められます。
日本版DBSは「犯罪歴確認」だけの制度ではない

日本版DBSという言葉から、「職員の性犯罪歴を確認する制度」というイメージを持つ方も多いと思います。
もちろん、性犯罪歴の確認はこの制度の大きな柱の一つです。
しかし、こども性暴力防止法で求められているのは、それだけではありません。
事業者には、性暴力を防ぐためのルールづくり、相談体制の整備、職員研修、被害が疑われる場合の対応、情報管理など、複数の取組が求められます。
たとえば、職員がこどもと接する際のルールを明確にすること、こどもや保護者が相談しやすい窓口を設けること、職員が不適切な関わりに気づけるよう研修を行うことなどが考えられます。
また、被害が疑われる場合には、こどもの心身に配慮しながら、必要な調査や保護、支援を行うことも重要です。 つまり、日本版DBSは「犯罪歴確認」だけではなく、こどもへの性暴力を防ぐための総合的な安全管理制度として理解する必要があります。
対象となる事業

こども性暴力防止法では、こどもと関わる一定の事業者が対象となります。
たとえば、学校、認定こども園、児童福祉施設、認可保育所、障害児支援に関わる事業所など、こどもと継続的に関わる事業者が関係してきます。
また、学習塾、スポーツクラブ、放課後児童クラブ、認可外保育事業など、民間の教育・保育等に関わる事業者についても、制度の対象となる場合があります。
ここで注意したいのは、すべての民間事業者が一律に同じ義務を負うわけではないという点です。
事業の種類や運営形態によって、法律上の義務対象となるのか、国の認定を受けることで制度の対象となるのかが異なります。
そのため、こどもと関わる事業を行っている場合には、自社や自施設がどの位置づけになるのかを早めに確認しておくことが重要です。
対象事業者については、別の記事で詳しく解説する予定です。
事業者に求められる主な対応

こども性暴力防止法に基づき、対象となる事業者には、主に次のような対応が求められます。
1. 日頃からのルールづくり・環境整備
こどもへの性暴力を防ぐためには、まず事業所内でのルールづくりが重要です。
たとえば、職員がこどもと1対1になる場面をどのように管理するか、身体接触を伴う支援や指導をどのように行うか、SNSや私的な連絡をどのように扱うかなど、現場で起こりうる場面を想定したルールが必要になります。
「これくらいは大丈夫だろう」という個人の判断に任せるのではなく、事業所として一定の基準を持つことが大切です。
2. 相談しやすい体制の整備
こどもが被害を受けた場合や、不安を感じた場合に、安心して相談できる体制を整える必要があります。
相談窓口を設けるだけでなく、こどもや保護者が「どこに相談すればよいのか」「相談した場合にどのように対応されるのか」を理解できるようにしておくことが大切です。
また、職員が異変に気づいた場合に、事業所内でどのように共有し、対応するのかという流れも整えておく必要があります。
3. 職員への研修
制度を整えても、実際にこどもと関わる職員が内容を理解していなければ、十分な防止策にはなりません。
そのため、職員に対して、こどもへの性暴力や不適切な行為に関する研修を行うことが求められます。
研修では、法律の内容だけでなく、現場でどのような行為が問題となるのか、こどものサインにどのように気づくのか、相談を受けた場合にどのように対応するのかといった実務的な内容も重要になります。
4. 犯罪事実確認
日本版DBSの中心的な仕組みとして、こどもと接する業務に従事する人について、一定の性犯罪歴の有無を確認する手続きがあります。
新たに職員を採用する場合だけでなく、配置転換や、すでに勤務している職員についても確認が必要になる場合があります。
また、一度確認すれば終わりではなく、5年ごとに再確認を行うこととされています。
犯罪事実確認は、採用や人事配置にも関わる重要な手続きです。どの職員が対象になるのか、どのタイミングで確認するのか、確認結果をどのように扱うのかについて、慎重に整理する必要があります。
5. 情報管理
犯罪事実確認によって扱う情報は、非常に慎重に取り扱うべき情報です。
そのため、誰が情報を扱うのか、どのように保管するのか、不要になった情報をどのように廃棄するのかなど、情報管理のルールを整える必要があります。
性犯罪歴に関する情報は、本人にとって非常に重要な個人情報です。制度の目的を達成するために必要な範囲で、適切に管理することが求められます。
いつから始まるのか

こども性暴力防止法は、2026年12月25日に施行される予定です。
まだ施行まで時間があるように感じるかもしれませんが、対象となる事業者にとっては、早めに準備を始めておくことが重要です。
制度への対応は、単に書類を1枚作れば終わるものではありません。
事業所内のルールづくり、職員研修、相談体制の整備、採用書類や就業規則の見直し、情報管理体制の整備など、複数の準備が必要になるためです。
特に、こどもと関わる事業を行っている事業者は、まず自社・自施設が制度の対象になるかどうかを確認しておく必要があります。
今から確認しておきたいこと

こどもに関わる事業者は、施行に向けて次のような点を確認しておくとよいでしょう。
まず、自社・自施設が制度の対象になるかどうかです。
学校、保育、障害児支援、放課後児童クラブ、学習塾、スポーツクラブなど、こどもと継続的に関わる事業を行っている場合には、対象となる可能性があります。
次に、こどもと接する業務に従事する人が誰なのかを整理する必要があります。
正社員だけでなく、パート、アルバイト、外部講師、委託先などが関わる場合には、どの範囲まで確認や研修の対象になるのかを検討する必要があります。
また、採用時の確認フローも重要です。
募集要項、採用時の誓約書、内定通知書、就業規則などについて、制度に対応できる内容になっているかを見直す必要があります。 さらに、性暴力防止のためのマニュアルや相談窓口、職員研修、情報管理規程なども、今後整備が必要になる可能性があります。
まとめ

日本版DBSは、こどもと関わる事業者にとって、今後の運営に大きく関わる制度です。
「性犯罪歴を確認する制度」という側面が注目されがちですが、実際には、こどもへの性暴力を防ぐために、事業者が日頃から安全管理体制を整えることが重要になります。
学校、保育所、障害児支援事業所、学習塾、スポーツクラブなど、こどもと関わる事業者は、制度の対象になるかどうかを確認し、施行に向けて少しずつ準備を進めていく必要があります。
次回は、日本版DBSの対象となる事業者について、義務対象となる事業者と、国の認定を受けることで対象となる事業者の違いを詳しく解説します。
制度への対応について不安なことがあれば、お気軽にご相談ください。
行政書士 内藤紗也
※本記事は2026年6月時点の情報をもとに作成しています。制度の詳細については、今後変更となる場合がありますので、最新情報をご確認ください。