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成年後見制度の民法改正案が閣議決定されました
こんにちは。
神戸市灘区のくじら行政書士事務所です。
「親が認知症になったとき、どうすればいいの?」「成年後見って使いづらいと聞くけど…」そんなご相談を受ける機会が増えています。
2026年4月3日、政府は成年後見制度を利用しやすくする民法改正案を閣議決定し、同日国会に提出しました。この改正は、長年指摘されてきた制度の使いにくさを解消しようとする大きな一歩です。今回は、改正のポイントをわかりやすくお伝えします。
そもそも成年後見制度とは?
成年後見制度は、認知症や知的障害・精神障害などで判断能力が不十分になった方のために、家庭裁判所が選んだ後見人が財産管理や生活上のサポートを行う仕組みです。民法では「法定後見制度」と「任意後見制度」の2種類があり、法定後見は現行では①成年後見人・②保佐人・③補助人の3段階に分かれています。
制度自体は2000年に始まりましたが、認知症高齢者が約600万人と推計される一方、2024年末時点の利用者は約25万人にとどまっています。制度の使いにくさが、利用を遠ざけてきた一因と言われています。
何が問題だったの?
① やめられない
判断能力が回復しない限り、亡くなるまで利用を続けなければなりませんでした。「不動産売却」「遺産分割協議」といったスポット的なニーズには対応しにくい構造でした。
② 本人の自己決定が制限されやすい
後見人の包括的な取消権・代理権により、本人の自己決定が必要以上に制限される場合があるという指摘がされていました。
③ 費用が重い
専門職後見人の場合、財産額に応じて月額2〜6万円程度の報酬を亡くなるまで払い続けるのが一般的でした。
改正案の4つのポイント
① 必要な期間だけ使えるようになる
制度利用の必要がなくなったと家庭裁判所が認めた場合、審判を取り消して制度を終了したり、権限の一部を取り消したりすることが可能になります。「実家の売却が終わるまで」「遺産分割協議の間だけ」といった期間限定の利用がしやすくなります。
② 後見人の選び方が変わる
これまでは専門職(弁護士・司法書士)が選任されるケースが約8割を占めていましたが、改正案では本人の意思や周囲との信頼関係をより重視する方向性が打ち出されています。親族がサポートを担いやすくなると期待されます。
③ 3段階から「補助」に一本化・特定補助制度の新設
現行の後見・保佐・補助という3類型を廃止し、補助の制度に一元化されます。権限は個別に設定でき、「どの権利を誰がサポートするか」をオーダーメイドで決められます。また「特定補助制度」が新設され、重要な財産行為(預金の払い出し・不動産売買・遺産分割など11項目)を取り消せる権限を後見人に持たせることも可能になります(医師2名以上の意見が必要)。
④ 費用の考え方も見直し
実際に行った作業の内容や回数に応じた報酬体系への見直しが検討されており、期間の限定利用と相まって、トータルコストが大幅に抑えられることが期待されています。
現行制度と改正案の比較
| 比較項目 | 現行 | 改正案 |
| 利用期間 | 原則、亡くなるまで終了できない | 必要な期間が過ぎたら終了できる |
| 後見人の選定 | 専門職が約8割・交代しにくい | 本人の意思や家族の意向を尊重 |
| サポート範囲 | 後見・保佐・補助の3段階 | 「補助」に一本化・個別設定が可能 |
| 費用 | 月額定額制が一生続く | 作業内容に応じた報酬体系へ |
実際の運用開始はいつ?
| 時期 | 内容 |
| 2026年4月 | 政府が改正案を閣議決定・国会に提出(現在) |
| 2026年内 | 国会で審議・可決されれば法律として成立 |
| 2026〜2027年 | 裁判所・役所のシステム・ルールの準備期間 |
| 2028年度中(予定) | 新制度スタート |
今回の閣議決定はあくまでも「政府の方針が固まった」段階です。実際に新制度が利用できるようになるのは約2年後の見込みです。
おわりに
今回の改正は、長年「使いにくい」と言われてきた成年後見制度を、より本人の意思に寄り添った柔軟な仕組みへと変える大きな転換点です。
任意後見契約の活用や、将来に備えた家族間での話し合いのサポートは、行政書士が力になれる場面でもあります。
「もしものときに備えておきたい」「親の財産管理が心配」とお感じの方は、ぜひお気軽にご相談ください。
行政書士 内藤紗也